Drainage
生活に欠かせない排水設備、知識を身につけ安全・安心な暮らしを。

排水管改修

生活に欠かすことができない排水設備。排水管内部は、定期的な清掃で詰まりを抑制していても、経年に伴う腐食等で漏水が発生することがあります。ここでは、排水設備の仕組みや雑排水管メンテナンスの必要性と改修についてご説明いたします。大きな被害を受けないためにも知識をしっかり身につけましょう。

マンションの排水設備について

マンションの排水は3種類あり、それぞれの系統の配管から流れます。

  1. 雑排水(洗面・浴室・キッチン等からの生活排水)⇒雑排水管で排水
  2. 汚水(便器からの生活排水)⇒汚水管で排水
  3. 雨水(建物に降った雨水)⇒雨水管で排水

それ以外に排水をスムーズに流すための通気管があります。

※雑排水管と汚水管を兼用している場合もあります。

マンションの排水管断面図(例)

床スラブ上配管

横枝管が自宅住戸のコンクリート床スラブの上(床板と床スラブの間)に配管されている。

天井配管(1970年代以前に見られる)

横枝管が下階住戸の天井に配管されている。

※図は一例であり、配管の設置状況はマンションにより異なります。

排水立て管の配置(例)

汚水管、雑俳水管、雨水管の立て管は共用部の扱いになりますが、雑排水管と汚水管は多くの場合専有部内に設置されています。

排水管の使用管材の種類

排水管は、大きく金属製と樹脂製の2種類があります。樹脂製の硬質塩化ビニル管は耐火性能がないため、耐火性能が必要な箇所には樹脂管に耐火性能を持たせた耐火二層管や耐火性硬質塩化ビニル管が用いられています。

鋳鉄管

汚水系統によく用いられている鋳鉄製の管材。

硬質塩化ビニルライニング鋼管

鋼管の内部に塩ビを貼りつけることで、水と接する部分を樹脂被覆としている管材。

硬質塩化ビニル管(塩ビ管)

鋼管に比べて抵抗が少なく、耐食性にも優れるため、水道用として幅広く用いられている管材。

耐火二層管

耐食性に優れる塩ビ管の外面に防火対策として繊維モルタルを被せた管材。

耐火性硬質ポリ塩化ビニル管

3層構造の塩ビ管。中間層に耐火性のある熱膨張材料を含有した塩ビ樹脂を用いた管材。

排水管の劣化について

排水管内部は、定期的な清掃で詰まりを抑制していても、経年に伴う腐食等で漏水が発生することがあります。排水管は日常生活で目に触れることがないため漏水等の異常に気付きにくく、その結果、大きな被害になることがあり、復旧に時間と費用がかかります。

排水管の劣化診断方法

内視鏡

CCDカメラやファイバースコープを管内に入れ、内部の状態を確認する方法。調査内容に応じて断水が必要です。

キッチンの排水管内部の内視鏡調査風景。CCDカメラで排水管の内部を見ながら劣化の状態を確認します。

抜管

管の一部を抜き取り、縦に割って確認する方法。対象となる排水管に関わる系統は断水になります。

X線

X線を照射して、管内部の腐食の状況や堆積物の有無などを調査する方法。

排水管改修工法の種類

改修工法は更新(新管に取り替え)更生(既存管を利用)の2つ。どちらを選定するかは、メンテナンスを含め、十分に検討する必要があります。

更生工事(工期が短い)

既存配管内部を樹脂でコーティングするのが更生工法です。管を新しいものに入れ替える更新工法に比べて工期は短くて済みますが、耐用年数は短いとされています。

樹脂系ライニング工法。既存の配管内部に樹脂塗料を流し込んで、管内に均一な厚さで塗膜を形成します。

チューブ反転工法。既存の配管の内部に空気圧で反転させながら樹脂を含ませた布を挿入・圧着し、新たな配管を作ります。

更新工事(工期が比較的長い)

経年劣化した鉄製の配管を樹脂製の配管に入れ替えるなど、管そのものを新しくするのが更新工法です。既存の管を利用する更生工法に比べて、工期は長くなります。

鉄製の配管(左)を樹脂管(右)に取り替えます。新たな配管を使用するため、更生工法と比較しても品質が安定し、耐久性能にも優れるなどのメリットがあります。

継手部分のみを更生する工法もあります

枝管と立て管の継手以外の劣化状況が良好な場合には、継手部分を部分的に補修・補強する工法(HJインコア工法)を採用することもあります。HJインコア工法について詳しくはこちら

※継手とは…枝管と立て管など、配管と配管をつなぎ合わせる部品のこと。

排水管の改修にかかる日数は?

マンションの規模や構造、改修方法で異なりますが、更新工法の場合、1住戸あたり概ね4〜5日の工期が一般的です。その中で、1日、もしくは2日、日中の排水が禁止になりますが、夜間は使用可能です。工事に当たって各住戸への立ち入り作業が必要になるため、基本的に在宅をお願いしています。更生工法の場合は、概ね1〜2日で工事は完了します。

実績の紹介

築年数30年を超え、老朽化した排水管から漏水が。グリーンプラザ八柱第2の実例

グリーンプラザ八柱第2は、1984年に完成したマンションで、大規模修繕工事なども計画的に実施してきましたが、築25年を過ぎたころから、専有部の給水・給湯管などに漏水が発生するようになり、2016年には共用部排水立て管(以下、排水管)にも劣化による漏水が起こってしまいました。

各住戸の排水が流れ込む排水管には、鉄製のものが使用されていましたが、経年劣化で排水管が錆びて破損した箇所から漏水していたため、早急に排水管の更新工事を行うことになりました。

工事の間は、排水の系統などによって水が使えなくなる日数・時間帯がありましたが、居住者のみなさまのご協力のもとスムーズに工事を完了することができました。

共用部の工事と同時に、ご要望いただいた方には専有部の給排水管の更新工事も実施しました。

腐食した排水管

排水管のメンテナンスについて

マンションでは年に1度あるいは2度、雑排水管の清掃を実施しています。

※雑排水管清掃の頻度はマンションによって異なります。

雑排水管清掃の必要性

共用立て管および横引き管には、食べ物のカス、油、毛髪、糸くずなど様々なものが流されます。汚れやごみが排水管内に徐々に蓄積されると、排水不良や悪臭を発生させる原因となります。
これらのトラブルを防ぐには、定期的な雑排水管の清掃が必要となります。

雑排水管清掃の箇所

共用立て管および横引き管、ならびにキッチン、浴室、洗面台、洗濯パン等の専有部の雑排水管を清掃します。

※構造上、清掃できない場合があります。

排水に係るマンションでのトラブル事例

雑排水管清掃の未実施などによる“つまり”で洗濯パンの排水口から雑排水が逆流!
気付くのが遅れると、被害は自宅だけでなく下の階へ拡大する恐れがあります。

雑排水管清掃について

雑排水管清掃は宅内から清掃作業を行う必要があるため、皆さまに在宅いただく必要があります。清掃未実施が続くと排水管が詰まり、逆流などの排水トラブルの原因となります。また、ドラム式などの大型洗濯機等で洗濯機の排水口がふさがっていると、清掃ができないことがあります。そのため、洗濯機の「かさ上げ台」の設置をお願いしております。ご理解の上、ご協力をお願いします。
※清掃後の排水に関する詰まりや逆流等の不具合に対し、1年間の保証があります。(ただし、原因が居住者様に起因する場合及び清掃未実施のお住まいは除きます。)

この他、排水管の状態を良好に保つために、日常の使用についてのお願いがあります。

  • 洗い物などのあとは水をしっかり流すようにしましょう。
  • 油や固形物を流さないようにしましょう。
  • ディスポーザーで処理してはいけないものは投入しないようにしましょう。(卵の殻など。詳しくは取扱説明書を参照してください。)
  • ディスポーザーを使用した場合は十分水を流すようにしましょう。

雑排水管清掃について詳しくはこちら

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